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君たちには算数が足りない③

算数が影響を及ぼす教科は、理科だけではない。社会科の資料の読み取りには、特に百分率を中心とした割合の知識が欠かせない。


先日中3の受験生が入試の過去問を持ってきて、「このグラフから生産額がどうやって分かるんですか?」と質問をくれた。平成28年度の青森県公立高校入試の社会の問題である。

選択肢1の「1960年にくらべて、2012年の化学の生産額は20倍以上になった。」と書いてあるが、このパーセンテージしか示されていない帯グラフから、どうして生産額が分かるのかがわからない、ということだった。いずれの年も、化学工業の占める割合自体はさほど変化はないようだ。


割合というのはもとの量に対しての何倍の量かを表す指標だから、各年の実際の生産額を求めるには、各年の総生産額である1.2兆円と29.2兆円に、化学工業の割合をかけ算してあげればよい。27.3%や27.0%では計算が面倒なので、このような細かい数はおよそ30%と統一してざっくり計算しても、社会科ならば差し支えはない。30%とは小数で0.3倍のことである。


(1960年の生産額)1.2兆円×0.3 = 0.36兆円

(2012年の生産額)29兆円×0.3 = 8.7兆円


0.36兆円に対して8.7兆円は20倍を超えているので、選択肢1の言っている内容は正しいということになる。


社会科の入試問題では毎年このような資料の読み取りが出題されるから、割合の話がさっぱり分からない子にとっては、もうお手上げの状態になる。特にこの辺のグラフと割合の関係は小5と小6にかけて2年越しで学んでいるはずなのだが、私の見る限り、ここの単元はどうにも定着が悪い。半数以上の子はよく分からないまま中学に上がっているのではないだろうかと感じる。


グラフを正しく解釈できることは、それだけでこの情報に溢れた現代社会を生きていく上で、大きな強みになる。テレビをつければ毎日ワイドショーが下世話な話題で盛り上がり、公共の電波を使って、真偽さえ定かでない誇張されまくったグラフを出してエライ人々があれこれ駄弁っているが、あれらをいちいち真に受けていたら、精神衛生上確実に悪い影響しかない。


基本的な算数さえ知っていれば、グラフの嘘や不自然さを見抜くことができ、メディアにとって都合のよい情報に惑わされることもなくなるのだから、これからを生きる子供たちには、ちゃんと自分の頭を使って賢く冷静に生きていくための知恵を、少しでも多く身につけてから社会に出て行ってほしいと思う。


(次回に続く)