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君たちには算数が足りない①



最近新しく入塾した生徒に、こんなプリントで演習をさせている。


その子は中学生ではあるが、たとえ中学生だろうと高校生だろうと、あるいは大人の学び直しに対しても、必要だと判断すれば算数に立ち返ることから始めている。むろん保護者の方へ理由をきちんと説明し、ご納得いただいた上での戻り学習である。


聞くところによれば、「なんで中3なのに算数をやらせるんですか!ちゃんと3年生のテスト対策して下さい!なんて怒ってしまう保護者もまれにいるらしいが、たぶんそれは塾側がきちんと算数の重要性を伝えていないと思われる。


そりゃアナタ、算数ってもんは★5クラスの超・超・超!重要教科でしょうよ。なにせ国語と並んで、全ての教科の基盤となっているのある。国語と算数が分からなけりゃ理科や社会はなんも分からん。プンスカ怒ってしまう保護者の気持ちも分からなくはないけれど、塾も塾で事情をろくに説明しないまま無断で学年を落として算数を始めちゃうんだから、きっと家庭との連携が取れていなかったのだろう。そこは喧嘩両成敗ということで。


ひとくちに算数といっても、大切なのは算数の感覚である。「算数の技能」ではない。

すなわち、単に暗算が速いとか、「みはじ」だの「くもわ」だの呼ばれるよく分からない図を指で隠しながら答えを出せるとか、「割合の『の』の前の数に注目してどうたらこうたら~(?)」……とか、そういう機械的で無味乾燥なテクニックではない。


それは例えば、一定の速度で車を走らせたとき、目的地まであとどれくらいで到着できるか概算できる「感覚」だったり、


税抜き定価の3割引の価格に8%の税を加えるといくらくらいになるのか、およその額をイメージできる「感覚」だったり、


あるいは"1/3時間"が20分と同じことであり、また中心角120°の扇形でもあることを、時計の文字盤をイメージしてすぐに求められる「感覚」だったり、そういう心身の隅々まで染みこんだ力を言う。


確かに、中学で数学を学ぶと、教科書の至る所に「公式めいたもの」がたくさん登場する。しかし、これらの「公式めいたもの」はむやみに暗記して道具として駆使するような代物では決してなく、小学校の算数の感覚があれば自然と導かれるし、運用もできるものがほとんどであるように思う。


例えば中学1年生で学ぶ比例の単元では、y=axの一般式を学ぶが、こんな仰々しい式を暗記などしなくても、比例とはつまり、比の関係なのである。「x:yの比は1:3です」、つまり「yはxに対して3倍の比になります」、だから式で表すと「y=3xです」、ただそれだけの話だ。「比例の関係」なんて出てきたら、それはただの比の話をしているんだ、という程度に思ってくれればいい。


(次回に続く)


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